シンフォニー ~樹
46

結子の お宮参りの後、お祖父様の一周忌法要を行う。

一周忌が済んだら 家は 解体する予定だったので それまでに みんなで 荷物の整理を 済ませていた。


お仏壇は お祖母様と一緒に 智くんの家で 新居の完成を待つ。


「家具や電気製品は 新しくするから。中身だけ 整理すればいいよ。」

と父は言ったけれど それでも相当の物がある。


父と母の仮住まいに 入りきれない荷物は、コンテナハウスに預ける。
 

「何だよ、これ。」

整理を手伝っていた智くんが お祖母様の部屋から 自分達の 小さい頃の 絵日記や作文を見つける。
 

「ダメダメ。今見たら 片付け、進まないわ。」

みんなが手を止めて 母が叫ぶ。

段ボール箱いっぱいの作品を、母は そっともとに戻し
 

「智之さんの家で 預かっておいてね。」

とニヤッと笑い、麻有ちゃんに預ける。
 
「これだから、古い家は 困るんだよ。」

父が言い、智くんも頷く。
 

「ものすごいお宝とか、出てこないの?」樹が言うと、
 
「あなた達以上の お宝はないわよ。」とお祖母様は笑う。
 


みんなそれぞれ、思い出と戦いながら 長い間 お世話になった家に 別れを告げる。

梅雨が明けたばかりの 暑い日。


空っぽになった家を 静かに見つめて。


最後の鍵は、お祖母様に 掛けてもらう。
 


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