シンフォニー ~樹

恭子達のやり取りに 温かく苦笑している樹を 恭子は見咎める。

少し拗ねたような目で 樹を見た。
 

「姫がお姉さんになるんだもの。自慢したいよね。」

樹は言って、笑顔を向ける。
 
「絵里ちゃん、女子校でも有名だから。実は友達にも、たくさん言っちゃいました。」

恭子は大きく頷いて、明るく言った。
 

「恭子。」と言って、健吾は天を仰ぐ。
 

「いいよ、いいよ。みんなに自慢しちゃいな。」

と言う樹に、恭子は 弾ける笑顔で頷く。
 
「お兄さん、恭子を煽らないで下さい。こいつ、本当におしゃべりだから。」

健吾は困った顔で、樹を見る。
 
「いいんだよ。おめでたい事なんだから。壮馬も ケンケンのこと、自慢していいよ。」

樹が壮馬に振ると、壮馬より前に 健吾が言う。
 

「俺、絵里加みたいに 有名じゃないから。自慢にならないから。ね。」
 
「えー。ケンケン、案外有名だよ。友達に言ったら 知っていたよ。」

壮馬は軽く答える。
 

「壮君も、友達に喋ったの?」

絵里加が驚いた声を上げる。


みんなの 温かい笑い声が響いて、とても幸せな空気が流れる。
 


「ケンケン、姫を泣かせたら、大勢から責められるよ。」

翔が笑顔で言う。

「翔先輩、それだけは 大丈夫です。俺、献身的ですから。」

健吾の答えは、また笑いを誘う。


大丈夫。絵里加は 幸せになれる。


ずっとこの笑いの中で、キラキラと泳がせてあげるから。


俺と翔で守るから。



樹の心を、今までとは違う 愛が満ちてくる。



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