シンフォニー ~樹

スタジオでの撮影が 始まる前に、健吾の妹は スマホで絵里加を写している。

「恭子ちゃん、一緒に撮ってあげるよ。」

樹が声をかけると、嬉しそうに 絵里加と並んで微笑む。


樹のスマホを覗いて、撮った写真を 確認すると、弾ける笑顔で
 
「私に送って下さい。」と言う。

携帯番号とLINEのIDを 交換して、恭子のスマホに 写真を送信する。
 

「私も、お兄さんの写真、撮ってあげる。」

と言って、樹と絵里加の写真を写し、樹に送ってくれる。


健吾の真似をして、樹を “お兄さん” と呼ぶ恭子。


たくさん アクセサリーが付いたスマホは、キラキラのケースに入っていて。
 
「すごいスマホだね。重くないの?」

思わず樹が聞いてしまう。
 
「重いです。でも、これなら失くさないから。」

さすが女子高生。樹は 声を出して笑いながら、
 
「失くすも何も、常に 持っているくせに。」

と言ってしまう。
 

「まあ、そうなんだけど。流行りだから。」

恭子は、苦笑しながら言う。

樹は、おや? と思って 恭子を見る。

素直で、案外大人だから。
 

「写真、すぐ撮るよね。」

好感を持って 聞いてみると、
 
「何でも撮ります。だから すぐメモリが いっぱいになっちゃうの。見ますか?」

と言って、樹に ライブラリを 見せてくれる。


本当に 色々撮ってある。

道端の花、教室の机、犬、電車。

そして絵里加の写真もたくさん。
 

「すごいね。でも、いい写真もあるじゃない。」

樹が言うと、うれしそうに、
 
「本当ですか?センスあるかな。」と得意気に笑う。

やっぱり樹は、声を上げて笑ってしまう。
 
「おかしいですか?」

不満そうに 樹を見る 恭子に、
 

「違う、違う。可愛いな、って思ったの。」

樹は 素直で明るい恭子に 自分が 癒されていることに 気付いていた。
 
 


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