シンフォニー ~樹

「俺、恭子ちゃんに ずっと側にいてほしい。恭子ちゃんを大切にしたいし 恭子ちゃんのために頑張りたい。」

走りながらで、見つめ合えないままで ずるいと思いながら 言ってしまう。
 
「本当?私、まだ高校生で子供だから。お兄さんに 相応しいのか不安だった。」

恭子も、正直に答えてくれる。
 

「ごめんね。もっと早く 伝えるべきだったね。でも 本気だよ。本気で 恭子ちゃんが 好きなんだ。」

樹が横を見ると 恭子は 甘く切ない目で 樹を見つめていた。

「お兄さんの回り 綺麗な人とか たくさんいて。お兄さん素敵だから 狙われているだろうって。私じゃ、敵わないかなって思っていたから。」

恭子に そんな思いをさせていた自分を 樹は責める。

愛おしさが込み上げて、樹を饒舌にする。
 

「ちゃんと 言わなかったから 苦しめてしまったね。ごめんね。でも、恭子ちゃんがいいんだ。恭子ちゃんじゃないと ダメなんだ。これからも、側にいてくれる?」


運転をしながら 恭子を チラチラしか見られないことが もどかしい。
 
「本当に?本当に 私でいいの?」

恭子は、慎重に聞く。
 
「もちろん。恭子ちゃんがいい。」

何度でも言いたい。安心させてあげたい。

可愛くて 優しくて 真っ直ぐな天使。
 


「ありがとう。私、ずっと お兄さんの側にいる。」

恭子は、明るく答える。

樹は左手で、そっと恭子の手を取る。
 

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