シンフォニー ~樹
18

樹が家に帰ると 智くん達が来ていた。

リビングを開けて 樹は一瞬 ギクッとした顔になる。
 

「これは、皆さんお揃いで。」と樹は言う。

「何よ、赤い顔して。お酒でも飲んでいるの?」

樹を見た母が言う。

それくらい、いつもと違う 雰囲気だったのだろう。
 

「飲む訳ないでしょう。お酒、苦手なんだから。大仕事を 片付けてきたんです。」

火照った顔を 掌であおぎながら 樹は言う。

みんなが 問いかける顔の中 智くんは穏やかで。

樹は 一度 智くんと目を合わせてから、
 


「実は みんなに 大事な話しがあるんだ。みんないて ちょうど良かったよ。」

と、真面目な顔で言う。
 
「本当に、どうしたのよ。改まって。」

母が警戒した目をする。
 


「驚かないでよ。実は今 間宮さんの家に 行ってきたんだ。俺 恭子ちゃんと 付き合っているから。あちらのご両親に 承諾頂いてきたよ。」

樹は一気に言う。智くんを見ると 優しく頷いてくれた。
 


こっちの家族も みんな驚いて 一瞬 無言になる。
 
「えー。恭子ちゃんと。いつからよ。」

やっぱり母が 最初に口を開く。
 
「付き合い始めたのは 最近だよ。恭子ちゃんが 高校を卒業してからと 思っていたんだけど。」

そこで、言葉を切ると、
 

「我慢できなくなったわけだ。」

何故か 父が後を続ける。樹は 苦笑して頷く。
 

「お祖父ちゃんは 樹の気持ち 何となく 気付いていたよ。」

お祖父様の言葉に みんなが “えー” と言って 顔を見合わせる。
 
「樹は すごく優しい目で 恭子ちゃんを見ていたからね。」

お祖父様は、樹の顔を見て静かに頷く。
 

「俺も 気付いていたよ。最近 樹の顔 明るくなったし。」

智くんは 相談されたことは 言わない。そっと 樹を援護してくれる。
 


「やだ、気付かなかったのは 私達だけ?親なのに。」

母は 途方に暮れた顔で 父を見る。

父は苦笑した後で、
 


「それで間宮さんは 何て言っていた?」と樹に聞く。
 
「条件付きで賛成 って言われたよ。」プッと笑ったのは お祖母様。
 
「高校を卒業するまでは 大人の付き合いはしない事。大学は必ず 卒業する事。」

問われる前に 樹は言う。

智くんは 愉快な声で笑う。
 


「娘の父親は、同じ気持ちだね。」と言う。
 
「樹、ちゃんと守れよ。」

父は、真面目な顔で 樹に言う。

それは 恭子との付き合いを 認めた言葉だった。


「もちろん。恭子が大学を卒業したら 結婚したいと思っているから。本気で 大切にしたいから。見守ってほしいんだ。」



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