シンフォニー ~樹
21

大学生になって スノーボードを始めた 健吾と絵里加は 樹の誘いに大喜びだった。

早朝出発して 軽井沢プリンスのスキー場へ向かう。

健吾は、車の運転も引き受けてくれた。
 


樹が 年末休暇に入った日に 恭子と買い物に出かけ 道具を揃えてあげる。

すべてを新調する樹に 恭子は恐縮して
 
「グローブとかゴーグルは、スキーのがあるから大丈夫だよ。」

と遠慮する。
 
「いいの、いいの。俺が買いたいの。」

と言って、樹は次々、選ぶ。

スノボウェアは 樹と同じブランドの 似たテイストで揃え 小物はペアにする。
 

ボードやブーツは 店員さんに相談して 初心者の恭子が 使いやすそうなものを選ぶ。

サイズやバインディングの角度など 細々と世話を焼く自分に 樹は苦笑しながらも 楽しくて仕方がない。

恭子も素直に 樹の言うとおり 右を向いたり左を向いたりする。

その楽しそうな笑顔を見ているだけで 樹も 笑顔になってしまう。
 


たくさんの買い物袋を 樹が持って 恭子の家に帰ると お母さんは 驚きの声を上げる。
 
「樹さん、恭子を甘やかし過ぎよ。この子 いくらでも頭に乗るから。」

辛口のお母さんの言葉に、恭子は頬を膨らます。

「違うんです。恭子は いらないって言ったのに 俺が 無理やり買ったんです。大丈夫です。暮れに 賞与を貰いましたから。」

樹が言うと お母さんは やれやれという顔で苦笑する。
 

「明後日 朝早く出て 遅くならないようにします。恭子が危なくないように 俺がちゃんと見ますので 安心して下さい。」

恭子と遠出することを 快く許してくれたお母さんに 樹は感謝して言う。
 

「大丈夫よ。健吾達も一緒なんだから。たまには、ゆっくりしていらっしゃいよ。」

と温かい言葉をかけてくれた。
 


< 74 / 166 >

この作品をシェア

pagetop