シンフォニー ~樹

高原野菜たっぷりの食事は 美味しくて 二人は 気持ち良く平らげていく。

食事中の会話は 甘さと 楽しさが 入り混じり 二人をさらに幸せな気持ちにしていた。


食事の後 少し散歩をして 部屋に戻る。

肩を抱く樹に ぴったり寄り添って歩く恭子。


可愛くて、愛おしくて、歩きながら 何度もキスをする樹。
 


部屋に戻ると 熱い期待が 二人をベッドに導いてしまう。

シャワーの後の 恭子の髪の匂いが 樹を甘く包んで唇を離せない。


初めての恭子を いたわりながら そっと一つになる二人。


「ありがとう、恭子。」

胸に抱いた恭子の 髪を撫でながら 樹は言う。
 
「ううん 私こそ ありがとう。」

目だけ上げて 樹を見て 恭子が答える。

今までよりも もっと深い愛が 二人の間に溢れ出し。

樹は きつく恭子を抱き締めた。



「恭子、怖くなかった?」

そのまま ベッドで抱き合って 静かに話す二人。
 
「全然。樹さん 優しくしてくれたでしょう。とっても幸せ。」

恭子は 一度 そこで言葉を切り

「今までよりも もっと樹さんが 私の一部になったみたい。」

愛おしさが込み上げて 樹は 恭子の髪に キスをする。
 

「愛している。絶対、離さないよ。」


「私も。こんな気持ち 初めて。樹さん 愛している。」


ぐったりと 放心する恭子を抱いて 優しく髪を撫でていると 静かに 目を閉じた恭子の呼吸が 寝息に変わる。


初めての交わりは 甘美でスムーズで。


樹に 寄り添い眠る 恭子の安心した寝顔は あまりにもあどけない。


樹は そっと苦笑してしまう。


さっき 大人の喜びに 声を上げた恭子とのギャップに。
 


そっと毛布で 恭子を包みながら、

『やっぱり俺は、恭子に 振り回されているな』


樹は苦笑する。それさえ 幸せに思えるほど 恭子が愛おしかった。



今まで 誰と愛を交わしても こんな風に 感じたことはなかった。

いつも 倦怠感と喪失感の中 早く一人になりたかった。

それが恭子には 溢れる愛しさで 一瞬も離したくないと思っている。


そっと恭子の髪に 唇を寄せているうちに いつしか樹も眠っていた。
 
 


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