ダンデライオン 〜美奈子
「和君、美奈ちゃん、いらっしゃい。」
躊躇いながら、智之達の後ろから 玄関に入る二人を、お姉様は 温かい笑顔で 迎えてくれた。
リビングで寛ぐお父様達に、丁寧に挨拶をして、結婚式の招待状を 差し出す和哉。
「おめでとう。楽しみにしているよ。」
お父様は、笑顔で 招待状を受け取る。
「あの、お父様。今日は、大切なお願いがあってお邪魔しました。」
美奈子が言うと、お父様は 優しく美奈子の方を見る。
「何だろう、美奈ちゃん。」と言って。
「結婚式のバージンロード、私と 歩いてほしいんです。」
美奈子は 一気に言う。
みんなが驚いた顔で、一瞬沈黙する。
お父様は、とても温かい、優しい笑顔で 美奈子を見て、
「美奈ちゃん、覚えていてくれたの。ありがとう。」と言った。
美奈子は その笑顔を見ただけでも、今日 来た甲斐があったと思うほどの 素敵な笑顔。
そして
「でも、それはできないよ。一生に一度のことだからね。ちゃんと お父さんと歩かないと 後悔するよ。俺は、美奈ちゃんの気持ちだけで 十分だからね。」と続けた。