愛溺〜番外編集〜



「中学の時はずっと憧れでした。そんな愛佳先輩に可愛がってもらえて嬉しかったです。でも今は嫌なんです」

「え…?」


いつもと違う寛太に、思わず後退りしてしまう。
何となく、その次の言葉を聞いたらいけない気がして。


「そ、そうだよね!寛太だって高校生だし、今はもう寛太の先輩じゃないもんね私。ごめんね気づいてあげられなくて。じゃあ私は残りのコーン取ってくるから…」

「男として見てほしいんです、俺のこと」
「…っ」


間に合わなかった。
寛太の手が伸びてきて、私の手首を掴んだのだ。

大きくてゴツゴツした手。
こんなにも彼は成長していた。


背も力関係も変わって、逆転して。
私が思うよりずっと彼は男の人になっていた。




「好きなんです、愛佳先輩のこと。この高校選んで良かったって心から思います。だって愛佳先輩と再会できたから」

「な、何言って…」

「瀬野先輩がいるのはわかっています。でもやっぱり俺、このまま黙って諦められないです」


寛太が寛太じゃないみたいで、調子が狂う。
こんな姿見たことない。

だって寛太が私のことを好き…?
そんなの考えたことすらなかった。


「ご、ごめん…!
寛太の気持ちには応えられなくて…」

「俺、頑張ります!」
「え…?」

「少しでも男として見てもらえるように!」


すごく気合の入った言い方だったけれど、私の話を聞いていただろうか。

気持ちには応えられないと言ったはずなのに。


「待って寛太、私…!」
「じゃあ俺、残りのコーン取りに行ってきますね!」


結局寛太は私の話を聞こうとせず、笑顔を浮かべてグラウンドに戻ってしまう。

体育館裏の倉庫で取り残された私は、その状況に呆然とするしかなかった。

< 24 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop