恋泥棒の犯行予告

1歩近づく度に日世の顔がひきつっていくのが地味に面白くて、私はついつい調子に乗ってしまった。


「六花、それ以上近づいたらキスするよ」


私と日世との距離はあと15センチほど。

仮にも母親がいる前で何てことを言うんだろうか、この男は。

してやったり、とでも言いたげな表情で私から少し距離をおいた。


「あの先生、バカみたいな量の課題出すからイヤなんだよ…。俺は他の勉強もしたいのに」

「私もだバカ! まったく…今日の補習サボっちゃったじゃん」


お皿に並べられた大量のスイカを手にとって、しゃくり。

口の中に広がるほんのりとした甘さ。

どうせなら、どこか風情のある縁側で風鈴の音を聞きながらゆっくり食べたかった。


「六花がサボったのは六花のせいであって俺のせいではないと思うんだけど? そこんとこどうなってるわけ?」

「あーもーうるさい。バカ日世は黙って宿題でもしてな」


ああ言えばこう言う。

私も負けてない。
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