永世中立でいたいんだけど、そうさせないのが君たちだよね 〜龍になっております〜
信じられない。あの日と同じ無邪気な顔で笑っている。…だが匂いが違う。クロウの匂いじゃない。クロウは暖かな春の日差しの匂いがした。でもこの男の子からはまた違った匂い。例えるのならばそうだな…大きく育った檜をパッかりと割ったような癒しの匂い。
「探すのにとても苦戦しましたよ。なにせ強力な結界魔法があの湖一帯を取り囲んでいましたので入ることすら困難でした。」
そうだ。あの湖の周りにはクロウが張った結界があったのだ。
「それにしてもあなた様は実に興味深い龍族であります。…あの伝説の龍族が私めの目の前にいらっしゃるとはなんとも光栄な限りでございます」
クロウと瓜二つのその男の子は礼儀正しく頭を下げながら話を続ける。…変な感じだ。あの元気で明るい性格の男の子が急に礼儀正しくなったみたいで。
「それにしてもあなた様が住処とされている湖から遠く離れた町があなた様によって跡形もなく消えている件については既に調査済みでございますが何か気になることはございませんか?」
…と言われても口を塞がれているようでは話すことも出来ないだろ。
なんだろうこの懐かしい感じは。
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