死にたい夜にかぎって。

しおれた駅の改札の前。その端っこにそっと背中を預けて携帯に目を落とす。

誰からも連絡はないし、誰からも声をかけられない。そりゃあそうだよな。知らない人に声をかけられて、嬉々としてついていくほど馬鹿じゃない。だけど、嫌々ついていきたい夜もある。それくらい、今の私の心は困窮しているのだ。

Instagramを開いて、静かにスクロールをしていく。

いつからか、いいねを押すのをやめた。押すのは、心の底から良いと思った投稿だけ。

そんななけなしのポリシーを掲げなければ、こんな風に平常心で他人の生活を覗き見することなんてできなかった。他人の幸せなんて、本当は見たくない。だけど、どこかで垣間見たいと気になっている衝動を抑えきれない。そんな矛盾を抱えたまま、私はいつの間にか25歳を迎えていた。嫌だなあ、人様の結婚ライフなんて見たくもない。だって、傷つくのはいつだってわたしだけだから。

現実から目を逸らすように顔をあげれば、幾分か雨の勢いが収まっていた。右手で簡単な雨除けを用意して、仕方なく足を踏み出す。

こんな時に迎えに来てくれる人でもいればなあ。どうして私は一人で雨に濡れて帰っているんだろう。
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