隣のシンタ


私とシンタは先生にいわれた通り
隣の空き教室に入った。


『よし!始めるか!!』

「よし!!私が3枚1組を作っていくからシンタはそれをホチキスでとめていってくれる??」

『りょうか~い!てか、なんかいきなりやる気になってね??』

「パパっと終わらせて早く帰ろ!!シンタも早く帰りたいでしょ??」

『…まーな。お前が早く帰りたいならがんばるわ。』


あれ??シンタの反応がなんか微妙…。
私はやっと開き直ってやる気出てきたのに…。
なんか変なこと言っちゃったかな?


『ほら!なにボケっとしてんだよ!始めんぞ~!』

「うん…。」


普通のシンタに戻った…。
さっきのは私の勘違いだったのかな?


「あっ!シンタ!はい、ホチキス。」

『お!ありがとう!忘れてたわ!』

「いや、ホチキスなしでどうやってプリントまとめるつもりだったの?!」

『えっ、お前知らないの??ホチキス使わずにプリントまとめる方法。』

「えっ!そんなのあるの??どうするの?!」

『指と指を擦り合わせて、そこで生じた摩擦で静電気を起こすと、その静電気で紙と紙がくっつくわけさ!』

「え!?ほんとにそんなこと出来るの!すごいね!!」

『…ごめん。嘘。』

「え…。ほんとに信じちゃったじゃん!!めっちゃ恥ずかしいんだけど!」

『ごめんごめん!”そんなわけないじゃん!”って言う予定で話したら思いのほか信じちゃうから、なんかごめん。』

「シンタさん、顔が笑ってますよ?全然ごめんって思ってないでしょ!!シンタ無駄に頭いいんだから本気で信じちゃったじゃん!!もぉ!」

『ほんとにごめんって!!あ、早くしないと終わんねーぞ??』

「えっ!!ほんとじゃん!!やばいやばい!始めよ!!」


シンタにまんまと話題を
変えられてることなんかに気づきもせず、
バタバタとやっと作業を始める。

適当に後ろのほうの席に座る。
シンタロウは私の前の席の椅子を引き、
椅子はそのままで体だけ私のほうを向いて座る。


「なんでそこに座るの?!絶対、作業しにくいじゃん!」

『いいの。俺がここで作業したいの。』

「隣のほうがしやすいよ??」

『ここがいいの。』

「なんで?私が納得する理由を述べよ!!」

『ん??そんなの簡単じゃん!お前の顔がよく見えるから。』

「え…。」


1つの机をはさんで向き合う私とシンタ。
ほおずえをついて余裕なシンタと、
どんな反応をすればいいかわからない私。


『ちょっと!無言はやめてよ!!』

「だって!どんな反応していいかわからないんだもん!」

『ふっ!顔真っ赤だよ。照れちゃって~、かわいい!』

「もう!!からかわないで!!ほっ、ほら!手を動かして!!」

『はいはい!』


ニヤニヤしながら手を動かし始めたシンタ。
なんだかシンタのほうを向けなくなった私。

こういう雰囲気ってなんか苦手…。
なんか気まずいっていうか、なんていうか。



私が無言で作業に集中していると
シンタもいつしか無言で作業していた。

さっきまでが嘘のようにシーンと
静まりかえった教室に響くのは、
私がプリントをトントンとそろえる音。
そして、シンタがプリントの端を
パチッパチッと2回止める音。

かすかに時計が時間を刻む音が
聞こえるたびに何だかわからない胸騒ぎに
襲われるのはいったいどうしてだろうか。

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