未来は霧のなか
30

終業式の二日前。廊下ですれ違った藤田に
 
「あっ。山口。放課後、体育教官室に来なさい。」

と声を掛けられた。

典子と一緒だった私は、
 
「はい。」

と答えて、教室に戻る。
 


「浩子、何かしたの?」

不審気に聞く典子に、私は話してしまう。

今の典子なら 多分 わかってくれると信じて。
 


「そんな事があったんだ。浩子 誰にも言わないで よく我慢したね。」

私の話しを聞き終えて 典子は優しく言った。
 
「言えないよ。裏切り者って思われるじゃん。」


私が答えると、
 
「誰も思わないよ。浩子が 美佐子のこと 心配しているの みんなわかっているもん。」

と典子は 言ってくれた。
 

「そうでもないよ。最近 もう美佐子に 付いて行けないって思うし。」


私は 正直に言ってしまう。
 


「それは みんな同じだよ。最近の美佐子、よくわからないし。」

典子の言う通り。


みんなが 最近の美佐子のことは 理解できないと思っていた。
 


「藤田に、なんて言うの?」典子に聞かれて、


「彼氏と喧嘩していて。先生に八つ当たりしました、って言う。」

と私は答えた。典子はケラケラ笑い、
 

「いいねえ。」と言った。
 
 


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