未来は霧のなか

「金井は、校則で 禁止されている場所に、出入りしていたんだ。」

と木本が言う。

「それだけですか。そんな人、他にも たくさんいるでしょう。」

木本の曖昧な言葉に、私は強気になる。
 
「ゲーセンとか、カラオケとか。隠れて バイトしている子だっているし。見つからなければ、いいんですか。」

飲酒とか大麻とか。

美佐子が、どこまでやっていたのか わからないから。

私は、探りながら聞く。
 


「そういう場所じゃなくて。ちょっと 法律を犯すような場所なんだよ。」

と木本は言い、信太郎と目を合わせる。
 
「それで 金井が 普段から、そういう場所に出入りしていたのか 山口は聞いていないか。」

木本の言葉を、信太郎が続ける。
 

「そういう場所って?どこですか。私と一緒の時は 駅前のバーガーショップしか 行かないですけど。」

私は、強く言い切る。

木本と信太郎は、もう一度 顔を見合わせた。
 


「山口は 金井が 地元で どんな友達と 付き合っているか 知らないの?」

信太郎が 私に聞く。

私は、美佐子が 信太郎を誘う口実に “地元の友達” と言ったことを 思い出す。
 
「美佐子 最近は 地元の友達と 遊んでないと思いますけど。夏休み前、何度か誘われて。断っていたら 誘われなくなった って言っていたから。」

私は、木本と信太郎を交互に見て言う。
 


二人の 微妙な表情から 私は 美佐子の処分が、まだ決まっていないことを 確信した。
 

「わかった。教室に 戻っていいよ。ありがとう。」

と木本は言った。
 
「先生。金井さん、どうなるんですか。」

と私は聞く。
 


「これから、金井の 希望も聞いて、話し合うから。」

木本は、そう言って私を促す。
 
「先生。金井さんって、見た目は 大人っぽいけど、中身は みんなと同じです。外見で判断しないで ちゃんと 金井さんの気持ち 聞いて下さいね。」

私は 木本よりも 信太郎の方を向いて言う。
 
「大丈夫だから。教室に戻りなさい。」

繰り返す木本。


私は、そっと席を立った。


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