未来は霧のなか

でも美佐子だけは、私達と 寄り道をしなかった。

地元のT市に、仲間が 待っているから。

学校で、どれだけ 仲良くなっても、本当の美佐子は 誰にも わからなかった。
 

「ねえ、美佐子って まっすぐ帰って、毎日 どこで 遊んでいるの?」

美佐子のいない放課後。

千恵が、誰にともなく聞く。
 

「知らない。西中の仲間と 遊んでいるんでしょう。」

典子が答える。
 
「悪い仲間?」

あゆみの言葉に、みんな少し笑う。
 


「クラブとか、行っているみたいよ。」

私が言うと、みんな ふーん と頷く。
 


「美佐子のお父さんって、先生でしょう。」

あゆみが言う。
 
「中学の先生だって。美佐子、遊んでいて 大丈夫なのかな。」

千恵の言葉に
 
「駄目でしょう。だから、わざわざ 遠い高校に来たんじゃない。」

私が言うと、みんな 神妙に頷く。
 


学校での美佐子は、私達と 全く変わらない。

でも地元で 遊んでいる美佐子を、誰も知らない。
 



美佐子がいないと、つい 美佐子の話しになる。


そんな自分は 嫌だったけれど。



私も、美佐子のことが 知りたかったから。




他の仲間以上に。
 





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