上司は優しい幼なじみ
後をついていくような形で店を出てると、「車持ってくる」と一言残し早歩きで路地裏に姿を消した。
邪魔にならないように扉から少し離れた場所で車を待つ。

しばらくすると黒のステーションワゴンが前に止まった。
中の人物は運転席から体を伸ばし、助手席側の窓を開けて顔をのぞかせた。

「おまたせ。どうぞ」

「お邪魔します」

社内には小さな音量で洋楽が流れていた。
こうして男性の車の助手席に乗るのは初めてだ。

「すごい良い車だね。かっこいい」

「それはね、俺も思う。一目ぼれだったんだ」

笑いながら得意げにそう言うたっくんに、昔の姿が重なった。

ご両親に新作のゲームや新しい洋服を買ってもらうと、「かっこいいでしょ」「すごいでしょ」とよく私に見せてきた。
ゲームのことなんて私にはわからなかったから、その時の反応には困ったものだった。
そんなところも、好きだった。
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