上司は優しい幼なじみ
静まり返る空間が息苦しい。頭を上げるが、反応が怖くて目線は落としたままだ。

「…色味はオフホワイト、理由はどんな部屋にも馴染むからということでしたが、その根拠は?」

静寂を破ったのはたっくんの一言だった。
彼とばっちり目が合い、それと同時に冷や汗が出る。
一応想定される質問の回答をまとめていたけれど、準備した項目があまりにも多く、それを見つけ出すのに焦った。

「え、えっと…白だと主張しすぎないので、好みの部屋の雰囲気にうまく調和すると思います」

「…主張しすぎない無難なデザインのテーブルを、わざわざうちで買いたいと思うかな?」

「…そ、それは」

用意していない質問内容に戸惑いを隠せないでいると、周りがざわつき始める。
私の準備不足が露呈した。最後を雑に終わらせてしまった仇が出た。

せっかく期待して与えてもらったチャンスを、私は自分の手でつぶしてしまった。
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