ぜんぜん足りない。


盛大なため息をつきながら、がっくりとうなだれてエレベーターまで向かう。

だから、そこに立っていた人物に気づくのが遅れてしまった。



「朝から陰気くさいね、何事?」

「っ⁉」


気だるい声に心臓が跳ねるのは、もはや条件反射みたいなもの。


「こおり君!!」

思わず叫ぶと、相手はうるさいと言うように若干顔をしかめた。



「耳壊れる」

「だって、朝から会えるなんて嬉しくて……」

「毎日学校で会ってんじゃん」

「学校じゃいつもわたしのこと無視するくせに!」

「エレベーター来た。乗るよ」


都合の悪い部分をさらりとかわしたこおり君のあとに続いて中に乗り込んだ。

扉が閉まると、静かな空間。


……ふたりっきり、だ。

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