ぜんぜん足りない。


1階に着くまで、あとほんのちょっとの時間しかない。


「だ、ダメかな?」

短いため息が降ってくる。


「欲求不満なの?」

「っえ」


そりゃあ、1週間もまともに会えてないんだし……。
言い訳を並べているうちに、チンッと音がして扉が開いてしまった。


ああ残念。そんなに上手くはいかないか。

憧れだったんだけどなあ、エレベーターキス。


「わるかったですね、欲求不満で……。こおり君がぜんぜん足りてないんだもん」


ちょっと拗ねた声が出た。
一方的な気持ちが恥ずかしくて、すぐに笑って誤魔化す。


「じゃあ、わたしはちょっと時間置いてからマンション出るね!」


一緒に登下校しないって約束、ちゃんと守るよ。
えらいでしょ。


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