ぜんぜん足りない。
ほんとに懲りない。

.

.



「んんっ……! んっ゛」


朝起きたら喉がおかしかった。


軽く咳払いをしてみたり、つばを呑んでみたりしたけど、何か重くがつっかえたような違和感と痛みが消えることはなかった。


喉の上のほうが、イガイガ、ザラザラ。

ほとんど経験がないからわかんないけど、これってもしかして……。



「え、風邪じゃね?」

それとなく律希に伝えると、予想通りの答えが返ってきた。



「やっぱり⁉」

「やっぱりって。そのくらい自分でわかれよ」

「風邪ってあんまり引いたことないのだよ〜。唯一覚えてるのは、律希とキョウダイになる前に高熱が出てね、でもそのとき誰も家にいなくて泣いてたこと」

「それってガチの昔話だろ」

「うーん、幼稚園のときかなあ。土曜日だった気がする」


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