ぜんぜん足りない。

お許しがでたので失礼して抱きつけば、わたしの背中にそっと腕が回る。


腕が回っ……。

え? ……抱きしめ、返された?



状況を把握したとたん、血液が一瞬で滾った。


無意識に息を止めてしまった。


すぐに心臓のドキドキについていけなくなって酸素を求めたけど、どれだけ息を吸っても酸素濃度低い気がする。



「こおり君、」

「おれの部屋? おまえの部屋?」


「え……」

「今からどっち行くの」



う、あ、ええと。

自分の口からしどろもどろな声が漏れた。

心臓を、ゆるく掴まれたみたいな感覚。



「こおり君の部屋……いきたい」



こおり君の腕の中。

暑くて熱くて、そう返事をしただけで、くらっと目眩がした。

< 49 / 341 >

この作品をシェア

pagetop