ぜんぜん足りない。


「桃音ちゃん元気だねー。なあんかいいことあった?」

「んふふ、ちょっとね」

「そうなんだ〜よかったねぇ」


みっちーがニコニコするから、わたしの顔は余計に緩んでしまう。

だけどそのあと、


「ところでさあ。なんで昨日、いきなり帰っちゃったの?」


なんて聞かれるからドキッとした。



「ええと、お腹! 痛くなっちゃったんだよね」

「わあマジか。大丈夫だった?」

「う、うん。なんとか。今はもうなんともないよ」



心が痛みながらも、そう答えるしかない。
ぜったいバレないっていうのが、こおり君との約束だから。

みっちーは「よかったね」と言って、そのまま友だちのところに行ってしまった。



そしてその数秒後、視界の端にこおり君の姿が映る。


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