溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。

ゆっくり顔をあげるその顔は、もう涙と雨でびしょ濡れだ。


「……っ、ごめんっ……」


それしか言えない俺は情けねえ。


震える体は、氷のように冷たい。


「……さく、くん……っ」


震える声で小さく俺の名前を呼ぶ小春を愛おしいと思った。


きつくきつく抱きしめる。


そのうち、小春は目を閉じてしまった。


気が抜けて、意識が遠のいたのかもしれない。


俺は小春を抱え、校舎の中に入り階段を降りると、


「永瀬っ、……っ」


心配してあとを追ってきていた教師は、小春の姿を見て絶句する。


「鍵、ありがとうございました」


「おっ、おお……で、大丈夫なのか?」


「タクシーを呼んでもらえますか?」


「わ、分かった」


「こんなことした奴を、俺は絶対に許しません。必ず犯人を見つけるんで、学校としても厳しく罰してください」
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