溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
と、ふと視線をその先にむけると。ちょうど永瀬くんが登校してくるのが見えた。


──ドクンッ。


今朝のことがよみがえって、体が一瞬で熱くなる。


ギュッと抱きしめられた胸……。


あんなのもう、忘れるんだっ。


ぶるんぶるんっ。


ギュッと目を瞑って頭を振る。


「ん? どうしたの?」


「へっ……」


「今度は熱?」


平井先輩は、私のおでこに手を当てた。


「わわっ」


ひんやり冷たい手のひらが、熱を吸収していくのがわかる。


それくらい、わたしの顔は今赤いってことだ。


でも今は平井先輩に触れられて、更に熱くなっていく。


──と、何かに引き寄せられるように顔を上げれば。


「……っ」


永瀬くんと目が合ってしまった。


えっ……。


サッと目をそらし、何事もなかったかのように通り過ぎて行くけど。


なんで今、こっち見てたの。


昨日までだったら、私なんて永瀬くんの眼中に入ることもなかったはずなのに。


しかもこんなところを見られちゃって、タイミング悪いな……。
< 58 / 326 >

この作品をシェア

pagetop