溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
忘れてた。コイツの存在を……。


なぜかエプロン姿の相沢は、少しおどおどしながら俺に向かって挨拶してきた。


俺はサッと目を逸らし、そのまま階段を昇って行った。


『しばらく女の子を預かることになったから』


母親からそう言われたのは少し前のこと。


姉貴のせいで、女に拒否反応を持っていることを知っている母親は、


『大丈夫よ。朔が心配しているような子じゃないから』


そんな風に言うから、きっと子供だろうと思っていた。


いくらなんでも、子供に対して尖った態度をとるような大人げない俺じゃない。


けど、クラスメイトって、なんだよ……。
あり得ねえだろっ!?


しかも、俺は相沢のことなんてまったく知らなかった。


あのとき、もっと突っ込んどくべきだった。そしたら、なにがなんでも拒否したのに。


向こうも俺を見て、驚いたような顔をしていた。


相沢が去ったリビングには、なぜかミニカーが落ちていた。
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