溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「お前なら秒で彼女できるだろ」


「選び放題だしな!」


好き勝手言いやがって。


「でもマジ、彼女欲しくねえの?」


俺の肩に手を乗せる新太が、哀れんだ目で俺を見る。


「3組の高野さん、めっちゃ性格いいらしいぞ。見た目も文句ないしな! もうあの子でいいじゃん!」


「ムリ」


3組の高野って誰だよ。俺にコクってきた女は、名前どころか顔だって覚えてねえ。


「あんな子に想われて靡かないなんて、男じゃねえって」


「見た目これで初恋もまだとか、天然記念物もんだろー」


「うるせえ」


寄ってたかって俺をネタに笑うダチ。マジでその目をついてやろうかと思う。


初恋……か。


思い出すのは、遠い記憶。


もうぼんやりとしか覚えていないが、俺にだって女の子と一緒にいてドキドキした瞬間があった。


あれは初恋だったのか分からないが……。


あとにも先にも、あんな感情を抱いたことはない。

< 91 / 326 >

この作品をシェア

pagetop