私のご主人様~ifストーリー~

「行くぞ。季龍、琴音を連れてこい」

「はい」

平沢さんと季龍さんの間に早くも流れる上下関係。

平沢さんを先頭に、屋敷の外に出ていく。季龍さんに肩を抱かれたまま、まるで殿を勤めるように出ていく人たちの背を見つめる。

後ろ髪を引かれるってこう言うことをいうのかな。

気づけば振り返っていて、誰もいない廊下を見つめる。

『おかえりなさい』

『おかえり、琴音』

いつも出迎えてくれていた人たちの顔が浮かぶ。

厳つい顔を綻ばせて笑いかけてくれた。ご飯を美味しいって食べてくれた。当たり前のように、ありがとうを何度もくれた。

私に、帰る場所を与えてくれていた。

…あぁ、そっか。ここは、私の帰る場所だったんだ。

分からないって蓋をして、気付かない振りをしていた。…でも、とっくに認めてたんだ。私の“家族”がいる家だったんだ。
< 40 / 167 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop