私のご主人様~ifストーリー~

今までずっと、使用人として生きてきた私にとって、人の上の立場としての振る舞いは経験のないものだ。

何をどうしたらいいのかさっぱり分からず、途方にくれた。

悶々と悩む姿を見かねてか、ため口と呼び捨てで自分達を呼ぶことからやってみたらと信洋さんが提案してくれた案に乗っかったけど、それすらままならなかった。

どうにかこうにか、少し意識すれば出来るようになってきたものの、正直胃が穴が開くんじゃないかと本気で考えるほど気持ち悪い。

今までとは真逆の振る舞いは、私の中の使用人精神を打ち砕くもので、やめていいなら今すぐやめたい。

でも、私は“平沢さん”の、組長の娘だ。

慎ましいのと、従属するのは全く違う。

これから組員たちがここに住むことになるはず。そんな大勢の中で、立場を揺るがしてはいけないと信洋さんからも忠告された。

分かっている。…分かっていても、長年の経験がそう簡単には崩れないのを今痛感した。
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