求婚蜜夜~エリート御曹司は滾る愛を注ぎたい~
その後は食事をしながら会話を楽しんだ。

帰り道は、遥人が当然のように家まで送ってくれた。

ひとりで歩くと長く感じる道のりも遥人と話しているとあっという間。別れ際は名残惜しさでいっぱいになった。

積極的過ぎて引かれたら嫌だと思い、寄って行ってとは言えなかったけれど、本当は引き止めたかった。

駅に引き返して行く彼を見送り、自宅に入る。

入浴してからベッドにぽすっと倒れ込むと、遥人のことで頭がいっぱいになった。

耳元で囁かれた好きだと言う言葉。抱きしめられたときの腕の強さの感覚は今でもはっきりと残っていて、思い出すと身もだえしてしまう。

(あの才賀君が私を好きだったなんて……まだ信じられない!)

手の届かない人だと思っていた。決して恋愛対象にはならない相手だと。

だけど遥人はなぜか結衣を選んでくれた。

これからはただの同期の友人ではない。

(急に関係が変ったから戸惑うけど……あれ? そう言えば、付き合おうとは言われてないかも)

遥人の口からそういった言葉は出て来なかったし、結衣も自分から言わなかった。

浮かれきっていた気持ちに不安の影が過る。

(私達、恋人同士になったんだよね?)

お互い好意を伝えあっている。「付き合おう」と言葉にしなくても、そういう関係だと受け止めていいはずだ。

とは言え自信が持てない。何しろ相手は社内一と言っても差し支えのないもてる男。

容姿は普通で仕事の評価も平均的な成績の結衣とではつり合いが取れていないと、こんなことばかり客観的に見てしまう。
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