先輩、私だけに赤く染まって

だから、もう終わりにしよう。


そう声にすると形がない何かに縛り付けられていた胸がスッと解放された気がした。


和樹は何かを言いかけたように口を開けて、だけど諦めたようにそれは声にすることはなかった。


十数秒の沈黙が私たちの間に生まれる。


「俺たち、幼馴染に戻れる?」


和樹ってこんな顔だったっけ。


私の記憶にある和樹はいつも周りの人に囲まれていて、自信に溢れた笑顔をしていた。


こんなに自信なさげな顔は見たことがない。


私は静かに首を横に振った。


「私は和樹にもう会わない」


はっきりと思いを告げられた和樹は明らかに動揺していた。


幼馴染という関係は切ることが出来ないと信じていたのだろう。


それがあったから今までも忘れきれなかったんだ。私も、和樹も。

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