先輩、私だけに赤く染まって

自然と笑顔が溢れる。


食べるのが勿体なくなってしまう可愛さだ。


今日の記念に一枚だけ写真を撮ろうとスマホを構える。


「可愛い」


ポツリ、早瀬先輩がそう呟くのが聞こえた。


この可愛さを分かってくれたんだ、と思ってスマホの画面から先輩に視線を移すと、


先輩が見ていたのはマカロンじゃなくて、私だった。


バッチリ目が合うと柔らかい笑みを浮かべていた顔が一転、驚きに変わる。


ゆっくりと手を口に当てて、目をパチパチさせた。


まるで、自分の言ったことが信じられないみたいに。


その頬は微かに赤く染まっている。


何、それ…。


そんな不意打ちやめてほしい。きっと違うと分かっていても、自分に良いように考えてしまう。

< 198 / 317 >

この作品をシェア

pagetop