先輩、私だけに赤く染まって

幸せそうな涼子に暗い話はしたくない。


次に先輩の話をするとしたらキッパリと振られてからにしよう。


そう心に決めて、涼子の言葉はさり気なくスルーした。


大会終わりの今日は部活がないようで、彼氏と早速デートするそうだ。


正真正銘のデート。


いつも通りを装っていたけど、やっぱり普段よりも浮かれて見えた。


放課後になり、楽しそうに笑ってデートに向かう涼子を見送って私はとぼとぼ一人帰途につく。


帰宅道は先輩との思い出がいっぱいで辛い。


公園で私を抱き締めた温もり。家の前で和樹から私を守った腕の痛み。


全てが目に、体に、焼き付いて離れない。


ミルクティーも今だけは参考書の裏に隠して、目に入らないようにしていた。


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