先輩、私だけに赤く染まって

あれからずっと一人で悩んでいたことを初めて口にする。


村田くんは少しの間考えるように黙った。


先輩が何を考えているか分からない。それが一番怖くて、一番知りたい。


「だけどまだ杉野の気持ちを伝えたわけじゃないんでしょ?勇気を出して言ってみなよ」


「無理だよ…、もうあんな思いしたくない」


ハッキリ振られたわけじゃないのに、あんなに辛かった。


それが好きだと伝えて今度は目を見て断られたら。


想像しただけで足がすくむ。


「言葉にしないと伝わらないこともあるんだよ。今諦めたら杉野、後悔するぞ」


真剣に言ってくれるその瞳が今は辛かった。


正しすぎて、そんなのは分かってるから余計に苦しくて。


< 218 / 317 >

この作品をシェア

pagetop