先輩、私だけに赤く染まって

「この前、先輩を連れて来てくれてありがとね」


村田くんの作戦は少々強引だったけど、今となっては感謝していた。


あれがなければズルズルと昇華できない想いに苦しんでいたかもしれない。


先輩には受け入れてもらえなかったけど、言えない想いを抱え込んでいくよりはずっとマシだろう。


「なんで付き合わないわけ?」


「分かんない。付き合うと私を傷付けるって言ってた」


「ふーん、その割には気にしてるみたいだけどね。…めちゃくちゃ睨まれてるし」


コソコソと私と話していた村田くんの目は、居心地悪そうに一瞬だけ前に立つ先輩に向けられて、すぐに逸らす。


その様子を不思議に思いながら私も何気なく前を見ると、形容し難い形相でこちらを見る先輩と目が合った。


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