魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜
「どうしてその少女を狩らなかったんだ?お前の姿は見えないのだから、抵抗もされないだろう?」
話を聞いていたルキが眉を寄せて尋ねた。
リム君は、うつむいたまま答える。
「あの子は、クリスマスが来るのをずっと楽しみにしていたから…病室にお見舞いに来ていたお母さんもフェルトの靴下をあげていて、どうせ寿命は延ばせないことはわかっていても、この世にいさせてあげたくて」
迷っているうちに針は時を刻み、寿命として決められた時刻が過ぎてしまったらしい。
事情を理解した従業員達はみんな同情したようにリム君を見つめていて、メディさんに至ってはハンカチを片手に涙ぐんでいる。
その時、猫の姿でリム君の腕の中に収まっているケットが口を開いた。
「リムは、その人間の女の子に恋をしたんだね」
「こい…?」
きょとんと目を丸くする少年。
数秒の沈黙の後、相変わらず表情は変わらないものの、少し戸惑ったような声が聞こえた。
「恋ってなに…?」
レストランにいた大人達がざわついた。ルキはクールな表情のままでいたものの、私はあまりに純粋でタイムリーな質問に呼吸が止まる。
ドキドキしていると、ケットは笑顔でカウンターに声をかけた。
「ヴァルトさん、出番だよ」
「どうして俺に振るのかな?」