魔界レストランをバズらせます〜転生少女の立ち退き撤回奮闘記〜

日本では見たこともない赤やピンクの花々が咲き誇る様を眺めていると、やがて、車窓に縁どられた先は、のどかな田園風景に変わった。

目当てだった花畑は、郊外へと向かう列車の十番目と十一番目の駅の間だけ見ることのできる景色。一瞬の楽しみが終わってしまったらしい。

フォルダは綺麗な花の写真でいっぱい。これだけ撮れたら満足だ。

地元に戻るための列車は、五駅先で乗り換えだった。都市からだいぶ離れてきたため、一駅の間隔は長い。降りる予定の駅まではまだ三十分ほどある。

目的を達成したら、なんだか眠くなってきた。今日は天気が良くて気持ちいいし、駅に着くまでちょっと眠ろうかな。

カメラを抱きしめて目を閉じると、温かな日差しと心地よい列車の揺れを感じた。

ふわふわとして、気持ちがいい。


『起きろ、ミレーナ!ぽやぽやするな!面倒なことになるに決まってる!』


頭の中でシグレのお小言が聞こえたが、夢の中に落ちていく私には、睡魔に抗う余裕はなかったのだ。

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