キミのこと痛いほどよく分かる
決意
「先生、
305号室の川口さんの体調が急激に悪化しています!」

夜も更けるころ。
資料を整理していたところで彼は呼ばれた。

同じことを繰り返しているだけだ。

彼にとってそれは、そういった日常の切り取りの部分でしかない。

もはや、呆れている。

こんなことをいつまで繰り返すのだろう。

ただ、いたずらに命を引き伸ばすような作業を、どうして行う必要があるのだろう。

運命。

人間が自分の時間をそういう風に受け入れられる生き物であるのならば、
こんなに楽なことはないのに。

彼の顔は、昼間とはほぼ真逆の冷たさをたたえていた。

あの少女に向けた熱い想いは、どこか失われつつあった。

それでも、

「今行く。」

そう言わなければならない。
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