結婚前提で頼む~一途な御曹司の強引な求愛~
「無駄なことは考えなくていい。一秒でも早く、リカバリの方法を考えろ。行っておくが、向こうの部長は絶対に譲っちゃくれないぞ。エビデンスも取ってないだろうしな」

反論はひとつもできない。私は先輩の顔も見れないくらいおろおろして頷いた。

「アポを取ったら、出来得る限りの対処策を考えて、動けるところは動き始めろ。進捗は逐一見せろ。わかったな!」
「は、はい!」

私は大声で返事し、頭を下げデスクに戻った。

「また雷じゃん」

隣のデスクの同期・皆川かほがくすりと笑う。

「私が悪いっす」

私はしょんぼりしつつフォルダを開ける。

「つくづく榛名さんと相性合わないよねえ」
「いや、これは相性というかね。私が仕事できないのが駄目なんだよ」

相手の電話番号をメールから探しつつ、頷く。

「仕事できる人が仕事できないヤツを見てると、お互いにストレスだよねえ」
「里乃子が仕事できないとは言ってない。要領はわるいけどね」

かほがばっさりと言い、それでも私を励ましてくれるのか続ける。

「里乃子と榛名さん、指導する側とされる側が噛み合ってないって感じ。指導係が変われば違うかも。そういうとこで相性が悪いって言ってんの」

私は唇を噤んだ。確かに榛名先輩と相性がいいかと言ったら最悪な気はする。
仕事できまくりの社内期待のエース・榛名傑と、お荷物を通り越して重量級の錘・行永里乃子。先輩には申し訳ない。

それでも!ひとまず目の前の案件は私のミスなので!挽回に勤める所存!!
行永里乃子、二十四歳、今日も我が身の不出来を嘆きつつ、一日でも早く怒られない日々がやってくることを信じて仕事します!!
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