アンサンブル ~翔

「壮君、どういうこと?」

絵里加が聞く。
 

「お祖母様が 亡くなった後 俺 会社でも 元気がなかったのね。そうしたら ナッちゃんが、 “ お祖母様は、廣澤さんの中にいる ” って言ってくれたの。」

壮馬から 初めて聞く話しに みんな一瞬 言葉を失くして 見つめ合う。
 


「俺、驚いちゃって。お祖父様が亡くなった時 お祖母様 同じこと言ったでしょう。」

壮馬の言葉に、みんなが しんみりと頷く。



「ナッちゃんのこと、良い子だって 思っていたけど。その後だよ。本気で意識したの。」


みんなの心を 熱い思いが溢れて 言葉が出ない。


翔と壮馬は 温かな連帯感に包まれて 静かに微笑み合う。
 


「やっぱりお袋には敵わないな。」


ポツンと言う父の言葉に 麻有ちゃんが そっと涙を拭った。
 
 

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