青春ヒロイズム
1.微かな希望


「新しい環境で学校生活を始めることは、(トモ)さんにとっても良いことだと思います。我が校では──……」

お父さんと同じくらいに見える優しそうな雰囲気の校長先生の隣で、生徒指導担当だと名乗ったガタイの良い強面の先生がお母さんの顔を見ながら神妙に頷いている。


「生徒の意見が学校に届きやすい風通しの良い校風ですから――……」

あまり抑揚のない、穏やかな声で話す校長先生の話は長くて退屈だ。

その話をやや前のめりになって聞きながら頷いているお母さんを横目で見遣る。

それから、ぼんやりと応接室の壁を眺めた。


校長室とドアをひとつ隔てて隣接している応接室にはガラス窓の付いた棚が並べてあって、そこにはトロフィーがいくつも飾ってある。

この学校の代々の生徒たちが部活の大会で納めてきた功績なんだろう。

古いものから新しいものまで、乱雑に飾られている。

退屈しのぎにそれらを数えていたら、校長先生を筆頭に大人たちが椅子から立ち上がった。



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