青春ヒロイズム


「ここ、これくらいでいいかな?」

「うーん、いいんじゃない?」

白い布の周りを、数人のクラスメートが取り囲んで忙しそうに作業している。

私たちのクラス名が書かれたその布と、喋りながらカバンを取りに歩く野宮さんたち、それから未だに床に座っている村田さんの背中と。順番に視線を向ける。


ここ数週間の放課後は、いつも以上に校内に活気がある。

体育祭が目前に迫ってきていて、みんなその準備で忙しいのだ。

体育祭前の数週間は、準備のために部活の開始時間も遅くなる。

部活が始まるまでの放課後の一時間ほどは、クラスの横断幕を制作したり、種目ごとに分かれて出場競技の練習をする時間に当てられていて、よほどの用がない限りクラス全員強制参加することになっていた。

体育祭ではひとり最低一種目以上に参加することが決まりで、それぞれが好きなものを選べる。

人気のある種目は、希望人数が多ければくじ引きだ。

種目決めのとき、残ったやつでいいかなと思って黙っていたら、二人三脚に出場することになった。


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