0センチの境界線
180センチくらいの身長。艶のある黒髪。高い鼻。薄い唇。切れ長で一重なくせにムカつくくらいに大きい目。
神様から沢山贈り物を貰っておいて、それらをフルに使おうとしない。
わたしだったら、もっと有効的に使えるのに。
勉強も、できる。運動も、できる。顔だっていい。
自分のスキルについて、ちゃんと理解して欲しい。
「とりあえず、明日から学校に行っても、わたしと同じ寮だって言っちゃダメ。友達を家に呼ぶのも禁止。金輪際禁止!」
「はあ!?どうやってゲームしろってんだよ」
「知らないよ!ゲームは1人でやればいいじゃん!じゃ、もう説明したから!わたしの部屋から出てってください…っ…!」
「は?雛、おい、ま…」
バタン、と。
無理やり飛鳥を押しやって、扉を閉める。
最後に飛鳥がなんか言いかけてた気がするけれど、伝えることは伝えたし、もう用はない。
扉ひとつで、自分の空間。
変わった生活かもしれないけど、お気に入りだったのに。
「………家の中に、飛鳥」
さっきみたいにデリカシーの欠片もない飛鳥なら、ノックもせずにわたしの部屋に入ってくるだろうし。
寮のこと教えてーってケロッとした顔で入ってきた飛鳥は、まるで男友達の部屋に入るかのようにわたしの部屋に入ってきて。
どうしよう。
今日はたまたま何となく下着とかその他もろもろ棚に片付けてあったけど。
これからは飛鳥が突然来るかもしれないことを考えながら過ごさなきゃならないわけ?
どんな修行なの?天罰?
「お家なはずなのに、気遣うなんてそんなの無理だよーーー!飛鳥のバカ!」
ベットにダイブして、枕にそう叫ぶけど、気は全然晴れない。
─────ねえ、神様。お願いです。
わたしの安心安全な寮生活を、どうか返してください。