本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
一颯さんは私の震えを押さえ込むように強く、強く抱き締めてきた。ずっとずっと欲しかった温もりなのに、震えている手を背中に回す事が出来ずに、ただ抱き締められていた。

一颯さんと高見沢さんが到着するまでに時間がかかったのは、穂坂様からの電話が来る前にナイトフロントから穂坂様のお連れ様の女性が到着したから案内して欲しいと言われたからだった。その後にナイトフロントから一颯さんの会社のスマホに電話があり、穂坂様が私を呼び出したと聞かされて、時間差が出来てしまったらしい。

「恵里奈が落ち着くまで、傍に居るから。抱き締められるのが嫌なら、しない。……傍に居ない方がいいならホテルに戻る」

「……本当は怖くてどうしようもなかったんです。気が抜けたら思い出しちゃって…。男の人の力って強くて怖かった…。い、ぶきさ…ん…、離れて行かないで…!」

今の私には一颯さんさえも拒絶反応を示してしまう程に怖くて、けれども…一颯さんに傍に居て欲しい。一人になったらもっと怖いから…、離れて行かないで。

「恵里奈が寝付くまで、添い寝してやる。シャワーは起きてから浴びて、その後に制服を取りに行けば良い」

ヒョイッと軽々しく持ち上げられ、再びのお姫様抱っこでベッドへ連れて行かれる。一颯さんはスーツの背広だけを脱ぎ、私の横にゴロンと寝転がった。

「ほら、ここにおいで」

お言葉に甘えて一颯さんの広げた右腕に頭を乗せて、寝る。左手は私の髪の毛を撫でてくれている。心地良くて震えも治まってきて、自然に涙が溢れた。
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