本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「…そう言えば、ボイコット…大丈夫でしょうか?」

中里さんが新しい箸を持って来て席に座った時、支配人に問いかけた。

「問題ないだろう。好きにさせておけ。そもそも、本店のニューオープンの系列ホテルとして、当ホテルが今、メディアの脚光を浴びているのは知っているだろう?

あいつらにとっても、本店からの栄転なんだ。易々とその地位を手放さないだろうから、本気でボイコットはしないだろう」

「そうですかねぇ…?」

「ボイコット出来る勇気があるなら、ある意味、尊敬する。万が一、そうなったとしても、何とかするしかないだろう。厨房は無理だが…」

「まさかとは思いますが、自分で何とかするつもりですか?」

「そうだな、ここに三人もいるしな。厨房だって、従食の方々の手を借りれば一つのレストランなら平気じゃないか?」

冗談なのか、本気なのかは分からない返答に私達は困惑する。

従業員食堂の調理人さん達も笑って話を聞いていて、「その時は任せてくれよ、一颯君」とか言っている。

ボイコットされたとしても、よっぽどでなければ全員はしないだろうし、支配人なら穴の埋め合わせを人脈と行動力で何とかするだろう。

一緒に仕事をしてみて分かった事は毒牙(色気)だけではなく、仕事に対する情熱が半端ないのだ。

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