本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「お忙しい中、ありがとうございます」

支配人の車に乗り込むとお礼を伝えて、シートベルトを締める。

久しぶりの車内のふんわりとした香りに癒される。支配人にしては可愛すぎる香りだが、やっぱり好きだな。

「別に…。俺が橋渡ししたんだから、挨拶がてら来ただけだ。しかし、本店の方がお前の顔が生き生きしてたな」

「皆さんに良くして頂いて、毎日が楽しくてやりがいがありました。そう言えば、常連の鈴木様にお会いしました。御夫婦は名前を覚えていて下さり、嬉しかった。本当に素敵な御夫婦ですよね!今度はウチのホテルに会いに来て下さるそうです。それから、ルームシェアした同室の女の子と仲良くなって…」

誰とも分かち合えなかった三ヶ月の話を勢いだけで話してしまい、まだまだ話し足りないが隣の支配人顔がクスクスと笑っているので、ハッとして途中で止めた。

「よっぽど楽しかったんだな。良かったな」

"やってしまった"と口を抑える私に優しく頭をポンポンと軽く叩く。久しぶりに触れられた事に対して、頬に熱を持つ。

「明日はゆっくり休んで、明後日からは仕事に打ち込める様にしなさい」

「はい」

「聞いてるかもしれないが、星野の推薦もあり、本人の意思も尊重して中里は料飲事務所に配属が決まった」

三ヶ月間の間で状況は変化し続けていて、優月ちゃんからの電話報告に寄ると…優月ちゃんは正式に料飲事務として勤務する事になったらしく、厨房の方々並びに星野さんに親切にして頂いてるらしい。

レストランホールの方々とも段々と打ち解けてきて、良い関係が気付けそうだと言っていた。
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