強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「はじめまして、芳奈の母の明美です。いつも芳奈がお世話になっているようで」

「いえ。こちらこそ芳奈さんには、大変お世話になっております。素敵な女性に出会えたと、嬉しい思いでいっぱいです」
 
ね、芳奈──と太陽のようなまばゆい眼差しを向けられて、大きく心臓が飛び跳ねる。

向けられたことのない顔を、いまここでするのは反則だ。アドリブの効かない私には、難度が高すぎる。

「八雲くん。今日君をここへ呼んだのは他でもない。芳奈との交際、先は結婚のことについて話を聞かせてもらいたい」
 
父が八雲さんに本題を突きつけ、和気あいあいとしていたその場の空気が静寂なものへと変わる。八雲さんには悪いけれど、ここは何事もなくうまく乗り切ってほしい。
 
心の中で手を合わせ、八雲さんの出方を待つ。
 
すると八雲さんはスッと立ち上がり、何が起こったの?と思う間もなく深々と頭を下げた。彼のことを唖然と見つめる。


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