強引な副社長の婚前指南～偽りの極甘同居が始まります～

もっと甘くなると思っていた生活は八雲さんの多忙も加わり、結ばれる前よりも普通なものになっていた。毎日帰りは遅いし、朝も早い。会社でも会うこともほとんどないから、その日どんなネクタイを締めていったのすらわからない。

でもだからといって嫌われているわけでもないし、良いことがひとつもないわけでもない。
　
寝室もひとつになって、一緒のベッドで寝るようになった。まだまだ慣れないけれど、時々お風呂にも一緒に入るようになったし、お互いの時間が許す限りふたりで過ごすようにもしている。

それでも何故か不安な気持ちを抱えてしまうのは、最近ちょっと体調が思わしくないのが原因なのかもしれない。

どこが？と聞かれればココというところはないのだけれど、いまいち調子が上がらない。

「私も年とったのかなぁ……」
　
深いため息をつくと、パコンと誰かが私の頭を叩いた。「痛い」と振り向き見上げると、千登世先輩が渋い顔をして立っている。