強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
ん? でもチョット待って。
私と目の前のこの人が昨晩身体を重ねたのならば、ファーストキスはもうとっくに終わってる? 意識のまったくないときに、そんな大切なシーンを済ませていたなんて……。
って、そこも違―う!
そんなこと……いや、そんなことで済む話ではないけれど、ややこしくなるから今はちょっと横に置いといて。なんで付き合うことになっているのか、思い出すのが先決だ。
すっかり酔いもさめ頭も順調に動き出し、昨日の記憶が徐々に蘇る。
昼間にあったことを話し、どうしたらいいのかわからなくなっていた私に、確かこの人が『俺がお前の恋人になってやる』とか、そんなようなこと言われた気がする。
薄れていく記憶の中、かすかに覚えている残響だ。
「酔っ払って困ってる私が可哀想で、恋人になってやるとか言っただけでしょ? そんなノリで付き合うなんて、冗談にもほどがあるわよ。これは遊びじゃないの。本当に困ってるっていうのに……」
「でも芳奈は、クリキホールディングスの副社長と付き合わなきゃならないんだよな?」