強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

『芳奈。俺がお前の恋人になってやる』なんて恒さんのお店で言ってたけれど、きっと副社長も酔った勢いに任せて口からでてしまっただけのこと。

それを今さら引き返せなくて、ムキになっているだけ。でもそれってよく考えてみたら、私にとってチャンスなんじゃない?

副社長の意図は計りかねるけれど、クリキホールディングスの副社長本人が恋人になってくれるなら、こんなに好都合なことはない。

とりあえず恋人だという話を引き伸ばして、そのうち切のいいところでフェードアウト。自然消滅的に別れれば、後腐れなくていい。 

同じ会社とは言え、相手は副社長。社内で個人的に顔を合わせることもほとんどないだろうし、仕事に差し支えることもない。

おお、私ってなんて頭がいいの。少しだけ先が見え始めて、心がウキウキ弾みだす。

恋人になってやる、付き合うことになったと言ったのは彼のほう。私には何ひとつ記憶がない。

だったら副社長には申し訳ないけれど、ここはひとつ役に立っていただくとしようじゃない。

そうと決まれば、準備、準備。

慌てて床に散らばっていた服をかき集めると、急いで帰り支度を始めた。



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